Destruction Wars
DESTRUCTION:0〜FROZEN SPRING〜 |
かつて、この大陸、『ノースアスト』は、アブソリュートという王朝が統括していた。 しかし、一つの権力が長く世界を支配すると、そこには当然のように『不信』の名のもとの争いがおきた。 争いは混乱と残酷さを極め、戦乱は果てなく続くかと思われた。 しかし、ある一つの勢力から、魔術の理、生命の理、科学と化学の理、自然の理、 そうありながらも、ノースアストの人間は混乱を収めた組織の名を知らなかった。 何時のまにか大陸中には、『オ―ゼガニィ』の息のかかった組織や会社が溢れていた。 その事も、気付かずに居た。 つい最近のことだ。混乱を治め、今尚大陸を支配している組織が『オーゼガニィ』という名である事、 最初にそれを知り、『支配』を良しとしない人間達が反抗組織をつくり、『オーゼガニィ』を攻撃した。 しかし、その全ては赤子の手を捻るように簡単に潰され、消された。 噂は、あっという間に大陸中に広まり、世界は『オーゼガニィ』を知ることになる。 レジスタンスも増え、同時に傅(かしず)く者も増えた。 その全てが計算され尽したような動きだった。 最初の『オーゼガニィ』への攻撃さえ、自作自演のようだった。 どうやって、だれも知らなかった『オーゼガニィ』を最初のレジスタンスは知ったのか。 全てはオーゼガニィが仕組んだ事。 たった一握りの人間たちとの『ゲーム』の為に。 たった一握りの人間たちを、不幸に誘う為の。 その全てが、気まぐれ。 一握りの人間の運命の歯車さえも手の内で回せる。 それが、ノースアストを支配する『オーゼガニィ』 名を知っても、それが何処にあるか解らない。 だれもが、『オーゼガニィ』に傅いているかも知れないのだ。 知っていた。 その名前を。その存在を。 奴等は、名乗った。あの時。 そのあとすぐにその名は大陸中に広まった。 広い湖の水面を風が凪いだ。 湖を囲む森がさわさわとなった。空は良く晴れた青。 その中に、そびえる巨大な建物…。 白亜のその建物は湖の中ほどにある島いっぱいに建てられていて、『巨大な箱』だった。 上空から見ればL字型の建物と黒い棟で構成されたそれは、『白露私設研究所』といった。 またの名を、 ――オーゼガニィ。 この建物が『オーゼガニィ』であることを知るものは少ない。 ここで働く研究員ですらその実態を知るものはほんの一握りだ。 生命や医療、兵器、生体兵器の開発などを中心に研究をしているこの施設は、確かに物騒ではあるが 医療などで上げた功績も兵器開発に比例して、いやそれ以上に大きい。 その研究内容の矛盾さに疑念を抱くものも居るが、少数である。 24時間休むことなく動き続ける研究所。 その裏に、大きな暗黒を隠しながらたくさんの人間を殺して、助けながら。 オーゼガニィは、この大陸を支配する。 「…どうやら、ゲームははじまったみたい…だね」 一般の研究員が入ることを許されない、黒い棟。そこはまさしく『オーゼガニィ』と呼ばれるべき場所。 オーゼガニィの『幹部』と呼ばれる者の住家である。 『白露私設研究所』の社長であり、『オーゼガニィ』の総帥であるクルーアル・アウトローは、眼下に広がる湖と山々を眺めて発した。 「そうですね…遅かったくらいではありませんか?」 彼の秘書テラ・フロスティーが静かに答える。 答えを受けてクルーアルは視線をテラにむける。 空調機の風で、彼の蒼と黒が共存する髪を微かに揺らした。 「…まぁ、何の後ろ盾も持たない人間が、大きな組織にはむかう決意を固める時間としては短いと思うけれどね」 ふ。と口の端を歪める。 「……確かに、ですね」 彼女もふっ。と笑う。 クルーアルは彼女の横をすり抜けて、美しく磨かれて鈍く光る黒曜石のデスクのいすに座り冷酷に笑う。 「さぁ、彼らはいつここに来てくれるのかな?…早く潰してあげたいよね。小さな希望を…」 声を押し殺して小さく笑い、その瞳をテラに向ける。 その瞳光は冷たく、慈悲の一つも覗かせてはいなかった。 そして、彼女はその全てを肯定して、 「ええ。そうですね」 と答えた。 天井が高くとられた部屋で、彼はまた小さく笑った。何よりも冷たく、残酷に。 錬金術師から受け継がれた大きな力と、世界。 その全てを使ったゲーム。 そしてそれは、かけがえのない『何かを』生み、『何かを』奪う。 世界の運命と、一握りの人間の運命の歯車は音を発てて回り始めた。 |
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