Destruction War 〜前夜祭〜
イベント事というものは、その当日よりもその過程が一番楽しいものだ。 きらめく街も、空も。 その日のために飾られる。 * ** *** **** ***** ここは白露までまだ遠い地であり、歩みはなるべく早く進めるに越した事はないのだが、一部の意見に押し切られてこの街で、クリスマスパーティをする事となった。 急ぐ旅ではあるが、何時も気を張り詰めて楽しみもない状態で居るのも殺伐としていて良くない。 そして、人としてそういうイベント事を大切にしていれば、大切な何かを忘れることもないだろう。 街は電飾やクリスマスカラーの飾りが溢れ、クリスマスソングが流れ華やいだ雰囲気で満たされる。 「プレゼント交換、っていうのはリクエストされたもの買ってきて其れを渡すことを言うのか…?……違うだろう…」 女性陣から渡されたプレゼントのリクエスト表を見ながら、キルはそう呟いた。 しかも、リクエスト表に書かれた品のどれもが、そう簡単に購入できそうな金額のものではないことも気に入らない。 有名ブランドのクリスマス限定コスメに、某有名ジュエリー店のクリスマス限定アクセサリー…。 「遠慮って言葉をしらねぇのか。あいつ等…っか、なんで此処に綺羅のリクエストまであるんだよ…」 呟きながら、煙草に火をつける。 そのままリクエスト表を焼いてしまおうか。 と考える。 「はい。キル君、歩き煙草禁止ー。マナー違反だからね」 と、まだ、火をつけて一呼吸すっただけの煙草を奪い取られ、携帯灰皿に其れを投げ入れながら紀が言う。 「てめっ。それまだ…」 「問答無用!マナーだよマナー。エチケットー!さ、さっさと買出しに行こうか!」 「そうそう。限定コスメにアクセサリー。のんびりしてたら、購入できませんよ?」 「其れこそあとが恐いよね。」 と言いながら、紀と新、オネスティは歩き出す。 「…さっきまで、そこのプラモデルに興奮してたのは何所の誰だよ…」 と、おもちゃ屋のショウウインドウに飾られた、巨大なリアルロボットのプラモデルを一瞥した。 ため息をひとつついて、故郷に用がある、と帰った琴夜と、いつの間にか居なくなっていたトゥルーザーを恨めしく思い出した。 * ** *** **** ***** 「ホント!ねぇ、何作る?」 「クリスマスなら、チキンとケーキは外せないでしょ?」 「うんうん。あとは…サラダでしょ?」 「グラタンとか、そういうのも作りたいわ!」 宿の一室で、料理のリストを作りながら彼女たちは談笑する。 傍らには、キャラメルのフレーバーティ。 「いいねぇ」 「ねぇねぇ、ケーキも勿論だけど、チョコレートフォンデュとかも良くない?」 「あ、いいかもいいかも!」 「もうきりないね。作りたいもの、沢山あって」 フレーバーティを一口飲んで、エレメントが楽しそうに言う。 「ホント!こういうの、久しぶりだわ。酒場やってた頃はそれなりに色々やってたんだけどね」 「フェアリィと琴夜も、クリスマス…明日には帰ってこれるって連絡あったし」 「そっかぁ、もう明日か」 しみじみと綺羅。 「そうよ!明日なら、早く買い出しにいかなくちゃ!とりあえず、作るものは此れでいいとして」 「そうね。早く行きましょ?」 壁にかけられたコートを着込んで、彼女達は街に繰り出す。 色彩と、幸せが満たされた街に。 * ** *** **** ***** あの日以来、聖夜を祝う事もなくなっていた。 「クリスマスは、本来主の生誕を祝うもので教会で粛々とミサを行い、祈りを捧げ静かに過ごすものだと……」 「あんた、神様信じてないのに、そういう事は言うのね」 「姉さんがそういっていた」 「…そう…」 姉の変わりに、自分の面倒を見てくれた姉の友人は、寂しそうに笑い、琴夜を抱きしめてそれから、店の奥から掌にのる程度の包みを琴夜とフェアリィがこれから『戻る場所』に居る人数分手渡した。 「此れはなんですか?」 「あけてからのお楽しみよ。…さぁいってらっしゃい」 「……行ってきます」 帰る場所は、此処にある。 * ** *** **** ***** 人数分届けられたのは、掌にのるジャンクから作られた、可愛らしいツリー。 酒類厳禁のクリスマスパーティは始まる。 イベント事を大切にしていれば、大切な何かを忘れることもないだろう。 ひと時、何もかもを忘れて楽しむことを咎めることは、誰もしない。 明日からまた、現実がまつ世界に放りこまれるならば。 今だけは。 楽しいひと時を。 Merry Christmas☆ ★
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END |
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